ネカマというもの。

最初はね、軽い気持ちでやってたんだよね。だってあんな可愛い魅力的な女キャラがいるのに男キャラ操作してもなんも楽しくない。男キャラのケツ見ながらゲームなんてごめんだね！と。

その上MMO初めてだったし、ゲーム内でそこまで仲良くなる人なんか出来ないと思ってたんだよ。

多少のチヤホヤは期待してたけど。

えぇ、そうですとも。

そんな軽い気持ちで始めたMMOなのだが今になって思う。

男キャラでしてればよかったなと。

ネカマをして仲間が出来て、言い寄ってくる人が出てきた時に思っていたことは、

これは恋愛シュミレーション！

俺のキャラ可愛いだろ？お？ww

ということ。

でもね、大切にしてくれる人が出来て良かったね…と我が子を見守るように見ていた自分とは裏腹に物事は進んでいく。

俺は映画でもなんでも世界に入り込む性格。

このゲームももちろん例外ではなく、その上キャラ愛も持っているので、自分のキャラと仲良くしてくれたり、優しい言葉をかけられるたびに一喜一憂してしまうのである。心の底から喜んで、優しいなぁ…と口ずさんでる自分がいるのである。

涙腺が緩んだり、恋愛スレとか読んでしまう自分がいるのである。

…異常である。

あれ、なんかおかしいぞ…

という自分の気持ちの変化、同性キャラの発言やモブに絡まれて助けてくれる行動やたまに送ってくるプレゼントに対するドキドキを必死に抑えていた。

その対抗のおかげでまぁ無事に理性は保てており、お陰様でリアルの人格に一切支障はない。

ゲームの電源を切れば俺は紛れもない男なのである。

ノンケなのである。胸をなでおろすのである。

俺のプレイスタイルとして、クレクレもしてないし典型的なhimechanプレイはしてない。

どちらかと言えばサバサバしてるし、一人で黙々とやるタイプ。エンドコンテンツも野良でガンガン行くのであまり可愛気はないとは思う。

もちろん「にゃん」という言葉も使わない。「よろしくにゃん♩」や「ありがとにゃん」や「にゃんにゃんにゃーーーん♩」などである。基本甘えない。裸にもならない。

使う言葉は「よろしくお願いします。」や、「お疲れ様でした。」と常時敬語である。

物をもらっても必ずお返しはしてるし、バレンタインデーの時はチョコを渡したりしてた。

とまー思い返すと「…」と思うことだらけなのだが、こういった言動が変にリアル女性らしさを感じさせてるのだろうか。

だがそんな平穏なネカマライフに問題が生じることは遅かれ早かれ必ず訪れる。

その問題とは？

通話だ。

こういったゲームは通話をしながらするというのも一種の楽しみ方ではある。エンドコンテンツともなると通話があるかないかでだいぶ難易度も変わってくる。

きゃはは、うふふしながらやるのであろう。

「通話してみない？」

深夜の時間、綺麗な星空の中突如鳴り響く雷の如く発せられた言葉。

いつから思ってたのか、唐突に言われた言葉に俺は(あぁ…ついにきたか…)と思った。でも、相手は勇気出したんだなぁ…という母性本能を抑えつつ、いろいろ考えた。

うむ。

俺が裏声で喋ってはただのオカマだ。ネカマのオカマだ。

フリーでダウンロード出来るボイスチェンジャーもフレと試みたのだが、やはりオカマだ。そもそもボイスチェンジャーされて聞こえてくる自分の声に爆笑してしまい、話しにならない。

俺はネカマなのだと痛感する。

ここが限界か…

そう思い鶴の恩返しの如く、感謝の気持ちだけ残して去ろうとも思った。

これ以上俺に、いや私に踏み込んだらダメ！私じゃなくてリアル女性はたくさんいるから！という意思表示も踏まえて、

「ごめん、リアルとはわけてるから…」

とネカマのテンプレ発言のような事を言ったら、あっさりOKしてくれた。

あれ、案外あっさり…

しつこかったら俺は本当に鶴になるつもりだった。

とまぁそんなこともあり、今もまだネカマの冒険記は続いてるわけなのだが、思うことは…

早く現状から抜け出したい｡･ﾟ･(ﾉ∀｀)･ﾟ･｡みんなとわいわいやりてーよおおおお！